プログラムの方針
法学主導の文理融合・文系内融合によりビジネス上の諸課題に対応
AI/IoT/ビッグデータに代表される第4次産業革命やバイオテクノロジーなどのイノベーションは、新たなビジネス上の諸課題を突きつけています。しかし、こうした諸課題に対しては、従来型の学問毎の教育では対処が困難です。第1に、イノベーションを本質的に理解するためには理系的学識が必要であり、対応する制度的解決を構築するためには文系的学識が必要ですので、文理融合が必要になります。第2に、法学・経済学・政治学による個別的対応には限界があるので、文系内融合が必要になります。
しかし、このように、学際的融合が必要であるとしても、現実の社会に生起する問題は複雑に絡み合っており、それに対応する解決策の完全な解答をゼロから構築することは不可能に近いものがあります。たとえば、新たな遺伝子断片に関する機能の発見に対して特許発明としての保護を与えるべきか否かということを勘案する際には、他の諸科学の応援を得て、イノベーションの促進のために特許を与えた方が良いのか、それとも基礎的な研究であるがためにかえって特許を付与しないほうが後続のイノベーションが進展するのか、ということを可能な限り解明していきます。残念ながら現在の科学ではその完全な解明は困難なのですが、そうであるとしても、法学では、この問題を従来化学物質について医薬としての特許を与える場合に要求していた薬効に匹敵しうる効果があるのかという差異の有無の問題として理解しなおし、薬効と同様と評価しうる機能の具体化が図られた場合に特許を付与するという暫定的な解を得るとともに、それを既存の特許発明と平等で正当化し、倫理等の問題がないか正義の観点から検証することができるのです。
ビジネスロー分野で産官学をリードする精鋭の輩出
先端ビジネスロー国際卓越大学院プログラムは、こうした法学主導による学際的な融合を教育プログラムに反映するために、必修科目として、修士課程用の先端ビジネスロー基礎セミナーと、博士課程用の先端ビジネスロー発展セミナーを用意し、法学を軸とした学際的融合を実現します。そこでは、自然科学、経済学、政治学、法学等を専攻する学生・教員を一同に集め、互いに自らの研究テーマを発表する機会を設けることで、学際的なシナジー効果を図るとともに、試行錯誤を可能とする法学固有の学問的手法と、自由・平等・正義などの法学固有の価値を伝授します。このようにして、隣接諸科学の知見を活用しつつ、利害関係者、さらには社会一般の納得を得ることができる解決策を構築する能力を有する人材を養成することが本プログラムの目標となります。
先端ビジネスロー国際卓越大学院プログラムの修了者には、ビジネスローの研究者として学際的・国際的研究をしたり、ビジネスの現場で最先端の課題を理解し法的解決策を提示したり、政策立案の担当者として人々の納得を得る法制度を提示したりするなど、ビジネスロー分野で産官学をリードする精鋭として活躍していただきたいと考えています。